宮崎おさかな紀行

おさかな大好き大学院生のブログ

台風後の打ち上げ魚調査

烈に強い台風14号、みなさま何事もございませんでしたか?

宮崎も相当な被害が出ていて、特に山間部は土砂崩れ等がひどく、未だに復旧していないところもあるみたいです。一刻も早い回復をお祈りしています。

さて、台風といえば海が荒れた後、海岸に色んな漂着物が打ちあがることが知られております。しかも人工物や無機物だけでなく、生き物も打ちあがることがあるとか。

例えば、ロケットカエルアンコウ(旧名:ロケットイザリウオ)という魚種は、台風後に打ちあがった個体が日本で初めて確認された個体となり、和名が提唱されております(以下の論文)。

www.jstage.jst.go.jp

 

とこのように、夢のある台風後の打ち上げ魚類を探すため、海岸散策(ビーチコーミング)を行いました。実は以前、宮崎県の青島では台風後にヨダレカケという珍しい魚が出ております。その時は散策で行ったわけではなく、釣りに行って偶然捕まえた、という形でした(以下のその時採れたヨダレカケの記録論文を載せます)。

https://www.researchgate.net/publication/324246579_The_northernmost_record_of_the_four-fingered_lipsucker_Andamia_tetradactyla_Actinoperygii_Blenniidae_based_on_a_specimen_from_Aoshima_Miyazaki_Prefecture_Kyushu_southern_Japan_gongqixianqingdaodecaiji

 

ですので、がっつりとした台風後の海岸散策は今回が初です。

まず宮崎県北部の海岸に行きましたが、どうやら台風時の波が強すぎて、道路や海岸林の中にまで流れてしまっていて、魚に関してはほとんど何も見つかりませんでした。

ただ、海にスッポンの子どもがいたり、普段は川の中上流の石の下にいるはずのヘビトンボの幼虫がたくさん河口近くの砂浜に打ちあがっていたりはしました。よほど川の流れが強かったんでしょうね...

ペットボトルや木はそこそこありました。

ハナデンシャっていうウミウシかな?

スッポンベビー。海はきつかったでしょう。

ヘビトンボの幼虫。どの子も生きていました。

 

魚がたくさん打ちあがるのを期待していたので、結構がっかりでした。

しかし、意外なところでたくさんの打ち上げ魚を見ることができました!

台風から5日後くらいに、調査で県南の方に行った際に、漁港に打ちあがっていた木々の隙間にいろんな魚が見えました!!

オヤビッチャかな。

スズメダイの仲間だと思われる魚(上)とイットウダイの仲間(下)。

たぶんハコフグ

ウミスズメっていうハコフグの仲間。

チゴダラ。

チゴダラと海鳥。

イトヒキアジ。

ヘラヤガラ。結構大きい。

ヘラヤガラの顔拡大。

ハナダイの仲間?

アブラヤッコ。これが一番テンション上がった!

 

 

残念ながら日数が経過していて干からびてはいましたが、相当な魚種を見れて大満足です。

次回の台風後は絶対ここに来ます笑

こんな感じでたくさんの魚が打ちあがるイベントではありますが、その分危険も伴います。

相当楽しいので、みなさんももし台風後の海を見に行くなら「2人以上で、常に海を見ながら行動」が必須です。

意外な発見も多いと思うので、安全に楽しんでみてください!

 








ユメタチモドキの論文!!

輩との共著論文が出版されました!

以下から読めます。

 

www.jstage.jst.go.jp

 

内容をまとめますと、「ユメタチモドキという魚が宮崎県の沿岸で採集されました。これは九州東沿岸からはじめての記録です。」という簡単なものです。

 

尾びれのある、タチウオの仲間!

釣って2日後でこの輝き!

体に合ってない、可愛らしい尾びれがある笑

 

今回のユメタチモドキ、釣り人の方からいただいたので、ものすごく美しいです!

釣りの魚は傷が少なくていいですね。

 

ただ、一つだけやらかしたのが、標本にするときに腹びれを立て忘れました...

尾びれがあるタチウオ、ということにだけ意識が向いており、腹びれを見逃すという失態...もったいない....

以後気を付けます。

 

最近は多くの釣り人から魚や写真を提供していただけるので、ネタが飽和状態です笑

これもSNSのおかげですね。ありがたい!!

みなさま、今後ともよろしくお願いいたします!

 

やりきった水族館!!

族館、やりきりました!!!!!!!

開館は4日でしたが、準備等含め約2か月ほど、全力疾走の日々でした!

 

今回は宮崎県北部の延岡市にある、リバーパル五ヶ瀬川という施設をお借りして開催しましたが、施設の方も親切でとてもいい企画が出来ました!

(水族館の詳細は以下のリンクより)

yukiyalates.hatenablog.com

 

水族館自体は8月6日開館で、準備はその二日前の4日からだったので、もうバタバタでした。

特に生き物採集と海水の運搬が大変でしたね。

準備中の写真。夜中もメンバーみんなで準備してました。

 

そして今回の水族館は最近よく耳にするSDGsを達成できる水族館にしたいと考えていたので、以下のような点を意識しました。

 

・身近な生き物を展示し、お客様にもっと自分の地元の素晴らしさを知ってもらう

・可能な限り労力をかけない(とはいえやっぱりこのような規企画はどうしても忙しくなってしまいますが...)

 

前者は

・お客様もその生き物を探しに行ける

・展示生物の採集が楽

というメリットもあります。

 

後者に関しては、病気等で死んでしまう生き物を出さないことも徹底しました。

僕らの企画は、水槽のサイズ等が水族館規模ではないので、どうしても病気が発生しやすくなります。

それを防止する意味でも水槽内にあまり凝った装飾品を入れない(これまでの経験上、特に海水魚は物少なめの方が病気になりにくい気がした)、エサを極力少なするなどの工夫をしました。

その甲斐あってか、ほとんどの生き物を最終日まで元気な状態で活かして展示出来ました。

宮崎の川魚。特に年配の方の受けが良かった。

山、川、海のつながりを説明するうえで、結構活躍したモクズガニ

外来種アメリカザリガニ。けっこう人気の生き物だった。

汽水域(海と川の水が混ざるところ)の魚も展示。この子はイトヒキサギ。

汽水にいるコガネチワラスボ。ウナギ?っていう方が多かった。

熱帯魚っぽい見た目の魚も多い宮崎の海を表現した水槽。

クロホシイシモチとネンブツダイ。特に釣り人に見てもらいたかった笑

海で見かけたことがある人が多かった、枯れ葉に擬態するナンヨウツバメウオ幼魚。

ウニ、ヒトデ、セミエビなどの無脊椎動物メインの水槽。意外にも人気でびっくり!

同時にたくさん来館されると、結構混雑してました。大盛況で嬉しい!

 

生物展示と同時に、絵本の読み聞かせや干潟観察会などのイベントも行いました。

こちらも大変好評で、今後もこのような活動をしたくなりました!

干潟観察会。生き物採って解説したり。

宮崎県門川町の海の絵本「夏休みの思い出」の読み聞かせ。

大学生による水辺の生きものに関する講座。

 

今回の企画で僕自身かなり成長できた部分があって、それはメンバーで協力するための指示を出せるようになってきた点です。

これまでも様々な企画や制作の代表をしてきましたが、やっぱり自力で済ませてしまうことが多く(指示下手)、メンバーには結構失礼なことをしてしまっていたと反省しておりました。

それらを踏まえて今回は、メンバー間での連携を徹底しました。

予算の関係上、準備期間が3ヶ月もない状態でしたが、広告やガイドブックの制作も含め企画が進められたので、これまでよりかは良い指示が出せたのではないかと思っています(代表としてのプレッシャーは半端じゃなかったです笑)。

 

これでようやく一息付けます。

研究もガンガン進めていきます!!

 

今回の企画、多くの方々のご協力を賜りました。

ありがとうございました!!

 

水族館やりまーす!!!

っと、抱えていた大きな仕事が終わりました~

夜中の1時とかまで実験所で作業する日々が2週間ほど続きましたが、この3連休はゆっくりできそうです!!嬉しい!!

 

さて、何がそんなに忙しかったのかを説明します。

今年の夏に学生主体の水族館を開催する企画の代表を僕がしていて、企画が採択された一か月後には水族館!という状況だったので、準備等でバタバタでした。

 

水族館は宮崎県延岡市のリバーパル五ケ瀬川という河川資料館で開催します。

「山から海への水のつながりを、見て、触れて、学ぶ」ことをコンセプトとしていて、児童をはじめとした多くの方に水辺の良さを知ってもらいたいという企画です。

期間は8月6~10日で、入場無料です!

先着???名にはプレゼントも!!!

 

詳細は以下のHPやチラシを見てください。

sites.google.com

3つ折りチラシの表

3つ折りチラシの裏

 

この準備でバタバタしてました~

ただ同時に展示生物の採集・管理もしており、日焼けもするし、パソコン触りすぎて目がおかしくなるし・・・みたいな数週間でした。

メンバーがとても活発で、色々と動き回ってくれるので楽しくなりそうな気がします!

せっかくなので採集の一場面も写真を載せますね。

トサカギンポ。もうウルトラマンにしか見えない。

クサフグってかわいいと改めて知った。

ヒメヤマトオサガニ。今まで全く気にしていなかったが、相当いる。

トビハゼ。寝ぼけてた可愛すぎ。

みんな名前は聞いたことある、スベスベマンジュウガニ

アカエソたち。この日はやたらいた。

そして標本も久々にやりました。

門川で過去に写真はあったけど標本はなかった魚、ヤシャカマス

結構ひれ破けていて難しかったですが、なんとか。

1mちょいの個体。6㎏くらいでした。

暑くて楽しい夏がやって来ましたね。

倒れないように突っ走ります!

とりとめもない近況報告

ぜか最近、バタバタな日々を過ごしています。

そんな中でも身の回りの整理ではないですが、過去の水中写真データを博物館に登録する作業なんかをやってます。

海で遊んでくれたハリセンボン。ちょっかいかけてごめんね笑

メシマウバウオっていう1cmくらいの魚です。どこにいるか分かるかな?

こちらを威嚇するアライソコケギンポ。黄色の口がこの種の特徴。

とまあ、こんな感じで結構良く撮れている写真は、神奈川県立・生命の星地球博物館のデータベースに登録するわけです。

過去に撮っておいた水中写真を、日付や座標と一緒に登録してます。

これをしておくと、一生残るデータになるので本当におすすめです。

以下のURLから、博物館に登録された色んな魚の写真検索できるので、興味のある方は見てみてください。

nh.kanagawa-museum.jp

 

ここ1か月はそんなに標本作ってません。

でも少しだけ作ったやつが、魚好きにはたまらなさそうなので、自慢します笑

磯のダンプカーことイソマグロ(の幼魚)。黄色い背鰭がかっこいい!

キアンコウの幼魚。神秘的ですね。ふわふわしてました!

ひれ立てるとかっこよくなりました!顔つきはもう立派なアンコウですね。

こんな感じの1か月でした。

来月からもっと忙しくなりそうですが、成果も出始めると思うので頑張ります。

あ、僕の大好きな夏がやって来ましたね。

皆さんも熱中症お気をつけて。

海行ったり川行ったり

週まではもう梅雨かなと思うくらいに雨降ったのに、ここ数日は晴れて暑くなりましたね。

最近はやたら岩がゴロゴロしていて波当たりの激しい浜辺や、逆に水が澄んでいて冷たい清流なんかで調査していました。

ゴロタ浜には、最近SNSのお魚界隈で大人気の、とあるハゼの仲間を探しに行っておりました。

宮崎県沿岸では珍しいゴロタ浜。

波打ち際のゴロタ石や、その下に堆積した礫の中には変わったハゼの仲間がいて、しかもまだまだ知られていない種類がたくさんいるかも、ということがここ数年で分かってきています。

特にミミズハゼというハゼの仲間は、2019年にハゼの研究者の方が静岡県からたくさんの種類を報告して(※1)、そこからSNS等でいろんな方があげ始めた気がします。

宮崎県沿岸もまだまだ知られていない種がいるかもということで、僕らも海の調査に行く際は、よくスコップ等を使うようになりました笑

2021年には後輩と一緒に実験所近くで採集したミミズハゼの仲間を報告したこともあります(※2)。

そんな中ごく最近、宮崎県沿岸でミミズハゼに似たような種類の珍しいハゼが報告されていました(※3)。

当然僕らも知らなかった種類だったので見てみたいと思い、その論文を読んで場所の検討を付け、浜辺に行ってました。

結果として、初めて行く場所だったので目当ての種類には出会えておりませんが、思いがけず別のミミズハゼには出会えたので、良しです。

砂利ガンガン掘って出てくる、変なハゼ。わかるかな?

にょろにょろです。

そして土曜日は後輩のフィールド調査に同行しました。

まだまだ水が冷たい川の中流

ここでは何を探したかというと、レッドリスト2020で絶滅危惧II類に指定されている、アリアケギバチという魚です(※4)。

ただややこしいのが、今回見に行った川ではこの種は外来種(もともとその場所にはいなかったが、ヒトの活動などで移入された種)と言われていることです。

前に在来の場所でも調査しましたが、その場所よりもたくさんいました。

数年前は少なかったですが、確実に増えてそうです。

ここのアリアケギバチ、前行った場所より圧倒的に動き回るので、写真が難しかった...

水がきれいなのでよく見える。

ボウズハゼと添い寝する小型のアリアケギバチ。

動き回ってきれいな写真が撮れない。

たくさんいましたが、希少種なのでほとんど逃がしました。

石のふりするドンコさん。バレバレですよ笑

お腹パンパンのオヤニラミ。そろそろ産卵かな。

明日から東京です。

人混みがどうしても苦手なので、結構つらい....

 

※1:渋川ほか.2019.静岡県産ミミズハゼ属魚類の分類学的検討(予報).東海自然誌 12:2996. 

https://www.fujimu100.jp/app/files/uploads/2019/04/Tokai-shizenshi12-05.pdf

 

※2:山﨑ほか.2021.宮崎県延岡市から得られた標本に基づく東九州初記録のナンセンハゼ.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan 5:1619. 

www.jstage.jst.go.jp

 

※3:是枝・本村.2022.宮崎県沿岸から得られたコマハゼとクロコマハゼ.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan 20:13–25

 

www.jstage.jst.go.jp

 

※4:環境省.2020.環境省レッドリスト2020.

http://www.env.go.jp/press/files/jp/114457.pdf

 

サメみたいなエイの仲間を食べてみた(トンガリサカタザメ)

師さんからの久々の連絡で、わくわくしながら漁港に行きました。

今回は大型のサメっぽいのが定置網に入ったそうです。

送られてきた写真ですぐに、これまで確認されていない魚ということが分かりました。

漁港に着くと、すでに漁師さんはいませんでしたが、代わりに木の”すのこ”の上に、その魚が置いてありました。

想像以上に大きくてびっくり!

顔つき?はものすごくかっこいい。

軽く1.5mはありそうな、サメっぽい魚です。なんとかサカタザメだった気がする、と思い出しながら、持って帰るために車に乗せようとしました。

しかし、重すぎて無理笑

え、うそでしょってくらいに重い...

ざっと30kg以上はありそうな上に持ちづらい。

10分くらい粘りましたが、あきらめて後輩に応援を頼みました。

しばらくして後輩が来てくれましたが、2人でも結構きつい...

どうしようかと思ったらちょうど連絡をくれた漁師さんが軽トラで様子見に来てくれました。

そして実験所まで運んであげようか?と言ってくれたので、甘えさせてもらいました!

このデカさです笑

実験所に着いて、今日がゼミの日だったことを思い出しました。

先日研究室配属されたばかりの学部3年生との初顔合わせの日です。

ゼミが終わるまではとりあえず、魚の周りに氷をおいて冷やしておきました。

ゼミ終了後、写真撮影へ。

その際、何となく僕の身長と同じくらいありそうと思って計ったら、ちょうど同じ180cm...

そりゃ重いわけだ....

この大きさだと、室内では撮影できません。程よい高さの階段で撮影しました。

途中、実験所の番犬プーちゃんが見守りに来たおかげか、案外すんなり撮り終わりました。

この撮り方は2回目でした。

興味津々のプーちゃん。

とんがってます!

この魚、顔先がとがっているうえにサメっぽい見た目なので、「トンガリサカタザメ」という和名の魚になります。

が、実はエイの仲間です。

エラ穴が腹側にあります。

エイリアン!!

さて、ここからが大変でした。

このサイズの魚、実験所では標本に出来ません。だからといってどこかの博物館に発送しようにも、クール便の上限は15kgで、荷物の3辺の計が120cm以下でなければなりません。

これは解体して、頭だけでも保管しておけばいいだろうという結論に至りました。

包丁で捌けるか不安なくらいに大きく硬そうな魚でしたが、きれいにできました。脊椎(背骨)だけはノコギリを使いました。

ちょっとした事件現場。

捌いた後、胴体部分は食用で保管することにしました。

見た目は抜群に良いですが、ほんのりアンモニア臭がするのでサメ・エイっぽさはあります。

せっかくの機会なので、その場にいたメンバーは新鮮な刺身を1切ずつ食べてみました。

 

身はきれいなので、期待が高まる。

口に入れると、なぜか酸っぱいような味がしました。

ただそんなに長続きはせず、しばらく噛んでいると歯ごたえにある白身魚の刺身みたいになります。

不思議な味でした。

他の料理でも食べてみたくなったので、次の日まで身を寝かせて料理することに。

刺身は食べたので、火を通して食べてみたいということで、フィッシュアンドチップスを選びました。

少し手間ではありますが、タルタルソースも自作して、ポテトも自分で揚げて盛り付けてみました。

具多めのタルタルソー

ネット情報では、衣にビールを使っているものが多かったので、真似してみました。

出来立てはすごくおいしそうで、余ったビールで一人乾杯をしながら食べることに。

頑張った結果、普通の白身魚のフライに近い感じでした。ただやっぱり最初は酸っぱさを感じます。

がんばった!味は少し酸味があるけど普通の魚笑

めったに食えるものではないので、今回経験できて本当に良かったです。

ちなみに今回のこのエイは、本当に珍しいらしく、どこかしらで報告できればと思っています。

その時はまた記事にしたいですね。