前回は熱帯性の危険なサメが宮崎県で確認されたという内容の論文を紹介しました(以下より)。
今回も似た内容ではありますが、別の種類の熱帯性の魚が宮崎県で確認されたので紹介します。
海がどんどん変わってきている、というのは宮崎県の漁師や釣り人の方からよく聞く言葉です。
海藻が減った、魚やイセエビが獲れなくなってきている、ウニやサンゴが増えた...など、よく聞きます。
そんな中でも最もよく聞くのが、これまで見たことないような魚が獲れたという話です。
日本列島の南部は黒潮という暖流の影響を非常に強く受けています。
黒潮はフィリピン諸島付近から台湾東部、琉球列島西部、トカラ海峡を通り、東九州九州の沿岸にやって来ます。
黒くて澄んでいることから栄養などが少ない海流ですが、南の方から様々な生き物の卵や仔魚などを運んできます(※1)。
そのため東九州から本州中部にかけての太平洋沿岸は、特に夏~秋にかけて多くの熱帯性魚類が出現します。
宮崎県沿岸は日本本土の中でも黒潮の影響を真っ先に受ける海域で、多くの熱帯種が現れます。
特に近年は分布を北に更新してくるような種も多く含まれます。
2022年11月、とある河川の調査中にいつも珍しい魚を分けてくださる漁師さんから、変なエイが獲れたと連絡が来ました。
調査から帰ってすぐ漁港に向かうと、まだ生きてる状態でキープされておりました。
早速持ち帰るために水から出して本当に感動しました。
というのも、このエイはヒョウモンオトメエイという種類で、図鑑等でイラストを見たことがあり、一度は出会ってみたい魚だったからです。
基本的に宮崎県で見られるエイは背中が茶色一色のものが大半です(とはいえどの種もかっこいいし大好きです)。
一方このエイは模様がある上に、ムチのように長いしっぽを持っていたので、世界一かっこいいエイだなとイラスト見た時に思っておりましたが、まさか宮崎県で生きてる姿を拝めるとは!
これまで日本本土で記録がないことは知っていたので、持って帰って標本にして、論文にすることにしました。
そして色々文献を調べてみたところ、日本での本種は主に図鑑等でしか記録されておらず、日本産の標本の記載がないことが分かりました。
ということで早めに論文書いて発表しました。
今年10月の日本生物地理学会の英文誌Biogeography誌に掲載されました。
論文は以下より
ヒョウモンオトメエイ、沖縄でもたまに獲れるみたいです。
以前のオオメジロザメ同様、この個体が琉球列島の方から来たのか、フィリピンや台湾から来たのかが気になります。
今年はまだまだこれからが珍しい熱帯種ラッシュだと思っているので、楽しみです!
※1: Endo & Matsuura. 2022. Geography, Currents, and Fish Diversity of Japan. In: Kai, Motomura, & Matsuura (Eds.) Fish Diversity of Japan: Evolution, Zoogeography, and Conservation, pp. 7–18. Springer Nature Singapore, Singapore.