宮崎おさかな紀行

おさかな大好き大学院生のブログ

透明で小さいけれど、それでも大人です(シロウオ)

まれてすぐの魚の子どもは、透明なものが多いです。ですが大半の種類で大きくなるにつれてだんだん色が出てきます。

実は今朝、漁師さんから連絡がある前は趣味の釣り兼調査としてのサンプリングをしに、とある川の出口近くにある砂浜に行っていました。日が昇る前から釣りをしましたが、なかなか釣れなかったので(いつも通り)、調査に切り替えました。今回は投網を使って、採れた魚を持って帰ろうと思っていました。

川の出口の方で、小さい魚を狙ってスズキっぽい魚が跳ねていたので、底に投網をしました。ただ想定以上に大きい魚がかかったのか、投網に穴が開いてしまいました。

回収して穴を見つけ、修理しないと無理かなと思ったときに、透明の何かが動いていることに気づきました。その透明のものはよく見ると魚で、しかも体の真ん中に空気の泡のようなものが見えたので、一瞬でシロウオだとわかりました。

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透き通った美しい体の魚。浮袋がはっきり見える。

この魚はハゼの仲間で、普段は沿岸で群れて生活しています。春先になると群れで川を上ってきて、川の下流のれきの下などで産卵する魚です(※1)。色は若干茶色がかった透明で、それでも立派な大人です。

今回は川の出口付近で10個体くらい採れたので、ちょうど産卵で上ってきたところだったと思われます。そんなにしょっちゅう会える魚ではないので、今回は数個体を持って帰って標本にすることにしました。いつもはあまり撮らない水槽で泳いでいる写真にも挑戦しました。

魚の標本を作る際に、魚の形を整えた後薬品で固めるのですが、透明な魚は白く濁りやすいので、ものすごく難易度が高いです。今回は後輩と色々試しながら、何とか撮りました。このさかなの、この個体の美しさを、最大限残せたのではないでしょうか。

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すぐに体が濁って白くなるのを何とかおさえた。

撮影中に、浮袋の周りに何かが多数見えました。そこで拡大写真を撮ってみると、どうやら卵です。写真では分かりづらいかもしれないですが、きれいな丸形ではなく、サッカーボールの表面のような形でした。

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浮袋の周りをよく見ると、卵らしきものが。

自然史の研究はどうしても標本が大事になります。

今回の魚も貴重な資料として(最終的には公的な博物館に登録しています)、最大限活用したいと思います。

 

※1:瀬能(監).2021.新版 日本のハゼ.株式会社 平凡社