宮崎県のとある川には、ここ数年で急激に増えてきている魚がいます。
その魚はコウライオヤニラミという種類で、本来は韓国などに分布しており、日本の川にはいるはずのない魚です。日本に元々生息するオヤニラミの仲間ですが、オヤニラミよりも大きくなり、最大30cmほどになります。観賞魚用としては知られていたみたいですが、2019年に宮崎県の川で国内では初めて確認された種類(※1)になります。
それからというもののかなり増えてきているみたいで、2022年には僕も調査に参加してその結果が論文(※2)になっています。個体数も増えていますが、最初に確認された地点から確実に分布範囲は広がってきています。
このコウライオヤニラミは厄介なことに結構貪欲な魚みたいで、動くものには飛びついてきます。実際ルアーも執拗に追いかけてくる魚です。
この魚が増えてきている場所には、オオヨドシマドジョウという日本固有で、しかも宮崎県にしかいない貴重な種類の魚がいることが知られていますので、そのような魚などへの影響も危惧されます。
そこで昨日は、研究室のメンバーと一緒に朝一でその川へ行き、コウライオヤニラミの現状を調査してみました。
まだ3月初旬の山は寒く、川は冷たかったです。小魚は結構活発でしたが、そこにいたスッポンはまだ冬眠明けなのか、触ってもあまり動きませんでした。
さすがに朝は寒すぎて潜りませんでしたが、正午からは潜って調査してみました。
前回コウライオヤニラミを見た場所で潜ると、結構濁っていてカマツカや小魚しか見えません。コウライオヤニラミは障害物の周りによくいるので探ってみましたが、中々見つけられないです。寒いからか、あまり川の真ん中にはいないのでしょうか。
そこでメンバー3人で川岸の植物の根や茎の下を、たも網でガサガサ調査することに。
するとすぐにコウライオヤニラミが!
夏秋とは違って、川の岸際にいるようです。サイズは大きいものから小さいものまでバラバラで、結構寿命が長そうだなと思いました。
その後、コウライオヤニラミだけでなくオヤニラミも出てきました。ただ、このオヤニラミは日本在来種ではあるものの、本来宮崎県には分布しない魚です。この魚もまた、ここでは外来魚であり、もしかするとオオヨドシマドジョウやその他の水生動物に影響を与えているかもしれないです。
昼は1時間程度の調査でしたが、たくさん採れたので終了に。
この魚たちは活かして持って帰って、研究材料にする予定です。
調査途中で少しだけですが、オオヨドシマドジョウも見れたので少し安心しました。
いつまでもこの美しいシマドジョウが見れる川であってほしいと願いばかりです。
しかし、ここまで増えてしまうと、駆除がかなり大変です。
よくこの手の外来種の話をすると、悪いのは人間なのだから駆除するのはかわいそうだという意見を耳にしますが、もともとの生き物はどうなるの?と考えてみてほしいです。
メダカですら、河川ごとに遺伝子が少しずつ変化する(遺伝的固有性がある)と言われいます。もしペットショップで買って増えすぎたメダカを、家の近所の川に逃がしたらどうなるか、というのも近年ではしっかり考えないといけないです。
容易になんでも放流しないようにしましょうね。
※1:日比野ほか.2019.大淀川水系におけるコウライオヤニラミの分布拡大と推測される在来魚類に与える影響.Nature of Kagoshima 45: 243–248.
※2:日比野ほか.2022.大淀川水系におけるコウライオヤニラミの分布拡大と推測される在来魚類に与える影響.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan 16: 18–24.